・一般に、同じ国家資格の日本の歯科医といっても、診断や治療法の選択、治療の手順なども千差万別です。ついこないだも、矯正の相談に行かれて3人の矯正歯科医からそれぞれ別のことを言われてどうしたらよいかわからないといった患者さんのコメントを聞きました。

なぜこのようなことになるのでしょうか。

ヨーロッパの歯内療法専門医達により書かれた優れたTEXT 「Textbook of Endodontology」Blackwell MunkusGaardにもそのことは「術者間誤差、術者内誤差」としてはっきり書かれています。 異なる歯科医同士で診断が違うのみならず、なんと同一の歯科医であってもタイミングが違うだけで違う判断…診断を下す場合があることまではっきり書かれています。

自分自身でもこれは覚えのあることです。

たとえば、虫歯の治療にしてみても、経験のないうちは病気をレントゲンでみつけると、どんな疾患であれ、まず治療が浮かびます。金属のつめものが必要かプラスチックでいけるか という具合です。経験をつんでいくと、疾患はあるが、これこれの状況になるまでは経過を見るのがよい、あるいは治療に入るにあたっては、治療によるリスクがこれくらいあり、放置したリスクはこのくらい など色々な状況を具体的に予測することができるようになります。また虫歯の周りに歯垢が非常に多くついたままの患者さんであればまずは治療よりも予防教育からすべきだろうという判断がされるかもしれません。

実体顕微鏡を使って診断をしている歯科医は肉眼だけであまり時間をかけないで診査している歯科医が見落とすような虫歯やつめものの不具合も発見します。すなわち顕微鏡の有無だけでも診断に差が出ます。

歯科医となってから正しく勉強をつづけている歯科医と歯科医になったときのままの頭の歯科医(がいるとすれば)との間に、全く次元の違うような臨床力の差=診断から治療+技術の差 が生じることは明らかです。 歯科学も日進月歩で日々新しい材料や治療方法、技術、知見が紹介されます。
もちろん最新であればよいというものではありません。最新なだけでまだ臨床データがないような治療法や薬剤もあります。これまでにも発表されて一時注目をあつめてもあっという間に廃れてしまった治療方法や器材、薬剤が多くあります。一方でこれまでは最善とされていた治療法に訂正が加わる場合もあります。そのような場合、その情報を知らなければ、従来のままの診療を行う歯科医は、現代の歯科医療水準の歯科医療を提供できないということになります。
結局、一口に歯科医といっても、頭に入っている歯科学の情報の精度や深さにかなりの差があるのが現実であり、そのことがこの「歯科医により言うことがまちまち」という差を生み出します。

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